研究ノート

芸術による教育の会研究部長:佐藤かよこ

芸術による教育の会副理事長:寺尾憲


ウェンディージレンマ

 ☆女性の2つのタイプ(ウェンディとティンカーベル)

 ウェンディはピーターパンに連れられて「ないない島」に心を弾ませて行ったけれど、そこに待っていたものは、苦難の連続。ワンパク少年達のおもりをさせられ、愛するピーターパンには母親代わりをさせられ、ちっともおもしろくない。ところがウェンディは、そうした不満を遠慮がちにしか言わなかった。ウェンディはピーターパンの友達ぶろうとしたけれど、実際は母親そのものだった。ピーターのごまかしをしだいに本当のことと信じるようになった。こうして悪循環が始まった。

 一方、ティンカーベルはピーターの罠にかかるようなへまはしない。ティンカーもピーターが好きだったが、自己を犠牲にしてまで気に入られようとは思わなかった。ウェンディはピーターのきまぐれを許してしまうが。ティンカーはそれに対して挑戦する。ウェンディはピーターが当たり散らし始めると小さくなってしまうが、ティンカーはそんなバカバカしいことに取り合っている暇はないと、相手にしない。ウェンディはこの上なくまじめで、おしとやか。ティンカーは少々行き過ぎもあるが、言いたいことはなんでも言い、人生をいつも前向きに行き、愛する人との対決をも辞さない。

 女性には誰にもこのウェンディとティンカーベルの要素がある。ウェンディ度が高い人は『母親ごっこ』の罠にはまりやすい。

☆ウェンディがいつも感じていること(罠にはまったウェンディ)

*彼に冷酷にされると、どうして私が罪悪感を感じるのかしら。

*私はなぜいつも彼の言う通りにするのかしら。

*私はなぜ、彼に頼れないのかしら。

*私はなぜ、最後に、まるで子供を叱るみたいに、彼を怒鳴りつけたくなるのかしら。

*なぜ私は、彼のお母さんになったみたいに感じるのかしら。

*彼がこのままだとしたら、私はこれから先、どうしたらいいの。

*彼は変わってくれないのかしら。

*なぜ彼は、私が苦しむのを見るのが好きなの?

*私はこんなに愛しているのに、彼はなぜ愛してくれないの。

*こんなひどい目にあうなんて、私がいったい何をしたって言うの。

*世話をしてあげる私がいなくなったら、披はどうなるのかしら。

*私がこんなに一生懸命やっているのに、彼はいったい何なの。何をしてくれたの。

*恋に落ちたはずなのに、なぜこんなにみじめなの。

*なぜ、男の人はみんな、こんなに残酷なの。

*私が失敗するたびに、彼はなぜあんなに怒り狂うの。

*私はそもそもなぜ彼と一緒にいるの。

*なぜ私は余計なことを言ってしまうのかしら。

*なぜ私は、彼をこんなに必要としているのかしら。

*彼はなぜ、私を近づけまいと壁を作ってしまうの。

*なぜ私は、まるで彼を脅かしているみたいに見えるのかしら。

*もし、彼がこのまま変わらなかったらどうしよう。彼と離婚するなんて、とても無理だわ。)

☆ウェンディの本質(ウェンディの心)

*見捨てられるのが怖い。

*傷付くことが怖い。

*素敵な女に見られたい。

*私はあの人にふさわしくない。

*人に嫌われたら生きて行けない。

*劣等感という無言の声におぴえている。

*傷付くことを恐れたために、愛を忘れ、愛を錯覚する。

*相手の機嫌を取るのが得意。

*ウェンディの母性本能は、嫌われたくないという心が変形したもの。

*誰かに依存していなければ不安。

☆ウェンディの若い頃は『シンデレラ』だった。

 シンデレラコンプレックスを持った女性は、結婚後ウェンディになりやすい。『シンデレラ』の心とは次のとうりです。

*他者によって守られ、他者に依存したいという女性の心

*いつか、白馬に乗った王子様が私をさらっていってくれるんだわ。

*いつか、私は、花開き、スターになるんだわ。

*努力することがいや。

*劣等感を持っている。

*皆から嫌われるのが何よりも怖い。

 自立して主体的に行動すると、女性としての魅力を失い、頼りとすべき男性の愛も得られず、孤独な人生を歩まなければならないという恐怖が強い。そんな危険を冒して成功し、冷たく寂しい王座を守るよりも、名もなき人々の中に埋没して、良き妻、良き母となることを選ぶ。これを『ジェンダー・パニック』という。

☆ウェンディの作り方(長女に多くみられる)

*母の干渉過多、父に本当の意味で父に愛されなかった女の子。

*自分は父と母に愛されているかを常に不安に思っている女の子。

*幼児期に、父や母に抱きしめてもらった経験が少ないこと(抱きしめてもらえないのは、拒否されていることと同じ)。

*いつも愚痴をこばす、怒りっぽい母。ピーターパンの父とウェンディの母に育った女の子は、たいていウェンディになる。

*幼児(女の子)は父に気に入られようとあらゆる努力する。父に愛されることを実感し、愛されていることに疑いを持たない女の子はウェンディにはならない。父の娘に対する接し方が最も重要である。

☆ウェンディーはピーターパンが大好き

 (結局、選んだ相手はピーターパンだった)

 ピーターパンの特徴は、頼りにならない、反抗的、怒りっぽい、自信のなさそうな態度、あわれっぽい、くよくよする、依存的、口上手、かわいい、幼児的、などなどである。男性がピーターパンの性質をあらわすためには、そこに、ウェンディの存在が必要である。つまりウェンディーとピーターパンはお互いに求め合い、お互いに必要としているのです。

☆ウェンディージレンマの段階(離婚の方程式)

・私の彼に限ってそんなはずないわ、何かのまちがえよ。(彼の仕打ちを認めない)

・彼は私なしではだめなの。

・彼なしでは、私やっていけないわ。(彼をなんとか手放すまいとする)

・彼は文句ばかり、これではあんまりだわ。

・彼にもう少し、ちゃんとしてもらわなくては…

・なんとか彼に悔い改めてもらって、解決しなければ。

・私さえ我慢すれば、私さえ犠牲になれば、問題は解決するんだわ。

・私はこんなにがんばっているのに、あなたは何なの。

・もうこれ以上はダメ、私の手に負えないわ。

・もう、疲れた。おしまいね。………離婚

☆ティンカーベルヘの変身(ウェンディージレンマの解消)

*ギブアンドテイクの考え方……憐れみからではなく、妥協できる関係。思い切った譲歩し、相手への期待を持つ。

*共感を持つ……相手に共感が持てるから、不都合や心の傷に耐えられる。

*信頼感……夫婦はお互いに依存している。どちらがこけても、必ず相手が助けてくれると言う信頼感を持つ。

*人間的成長……夫婦といえども別個の人格だから、相手には相手の要求があり自分には自分の要求がある。趣味、友人、教養、思想、宗教などそれぞれ別の世界での、相手の人間的成長には、異義をさしはさまない。

*わかちあい……意見や考え、感情や人生観を自由に述べあえる仲。たとえ食い違っていても一方的に裁いたりしない。事実は事実として認める。

*現実主義……二人の愛情生活がうまくいかなくても、それを受け入れる。お互いの葛藤や意見の対立をすべて解決しようとしない。それ以上追及しない。

*親密……夫婦と言えども、恋人の関係を忘れてはいけない。茶目っけと、羞恥心は、新鮮さを蘇らせる。

*赤い糸で結ばれている……二人は赤い糸で結ばれていることを信じる。縛り付けられているのではない。

☆スーパーウーマンシンドローム

 女性は、男性とも対等に社会的に仕事をして成功し、同時に良い夫を持って妻としてもしっかりやり、さらに子供を産んで母親としても一人前の能力を発揮する。女性はこうなって当たり前、という考え方がある(アメリカにとくに多く、日本でも増えている)。これを実現するためには、たいへんなストレスが生ずる。共働きをしてたいへん疲れてしまった。夫とうまくいかない。しかしそうかといって、皆が働いているのに自分だけ引っ込むのはなんとも格好が悪い。子供ができた。とても仕事を続けるのは大変だ。だけど、今は子供を育て、仕事も続けるのが女の道ということになっているので、なんとかやらなくてはいけない。こうしたストレスが心身の症状を引き起こす。これは、自立したために、女性のストレスが積もり積もって破綻するもので、『ウーマンズバーンアウト(女性の燃えつき症候群)』と言われている。

(ダン・カイリーの『ピーターパンシンドローム』および『ウェンディージレンマ』を参照し引用した)