研究ノート

芸術による教育の会研究部長:佐藤かよこ

芸術による教育の会副理事長:寺尾憲


柔軟な思考力の育成

柔軟な思考力を伸ばす方法

集中力を伸ばす方法

★子供はおもしろいことを好む、興味があれば集中する。

★集中力がない

*本来子供は一つのことに集中できない。これは、興味の対象がたくさんあるために、興味がすぐに移ってしまうだけです。

*『うちの子は集中力がない』という親が多いが、テレビだけは集中して見る。これは、集中力があることを証明している。子供はおもしろいことに熱中しているだけで、テレビはおもしろい。だから熱中する。

★親の干渉過多は、集中力(持続力、落ち着き)を失わせる。

*子供が何かをやっているとき、終わるのを待っていられない親。

*親のタイムスケジュールで子供を動かす親。

*子供の自発性をつみとる母(『冷蔵庫にいれると物が悪くならない』と聞いた幼児は、バターや肉を出して、自分のお人形を入れた』・・・・・・ばかなことをすると、親におこられた。)

★子供に集中力が無いと考えて親は、子供が自発的に興味を持ってやっていることに対して、危ない、汚い、といって干渉したことがかなりある。

★おちつきのない子供は親の生活態度が原因となっていることが多い。

*しょっちゅう人がざわざわと出入りする。

*子供への干渉過多の親。

*母親自身が落ち着かない。(イライラ、そわそわ)

*子供への話し方が、短く早くたたみかける母。

☆すぐに答えを知りたがる子は伸びない

*パズルをやってもすぐに答えを見てしまう。

*手品を見たら、どうしてかを考えずに、すぐに種を強引に知りたがる。(伸びる子はじっとがまんして考える)

*結果をすぐにほしがる。

これらの子供達は、周りがすぐに結果(答えなど)を与えてしまうため、それが習慣になってしまったのです。

★どうしたらよいか

*日常の中で、根気良く熱中する習慣を身に付けること。

*すぐに答えを見る習慣を直ちに止めさせる事が重要。

*考える事は、パズルを解いていることと同じ。

 『考える楽しさ』を子供が経験したら、急速に伸びます。

*パズル…解けるまであきらめない。解答は見ない。

 母が見本を見せる。パズルを子供と一緒に解けるまでやる。

 その際、楽しんでやることが重要。

 解けた時のかいかんと喜びを子供と一緒に味わう。

 常に楽しむ事が重要

*算数や数学の応用問題は、パズルそのものです。考える楽しさを知った子供は、自分で答えを見付けるまで、答えを見る事は決してしません。答えを見たら、楽しみを奪われた気持ちになります。

☆父親の役割は大きい

・昔は『厳父慈母』、今は『甘父干母』

・父の存在感、父の権威が子供を非行、いじめといじめられから脱出する力となる。

・社会人としての父を見せることがとっても重要です。

 ごろごろしているだけの父のイメージを打ち破ることが大切です。

・子供が、本音で自分の気持ちを話しているとき、それを父が真剣に受け止めるか、忙しさのあまり受け流すかで、天と地にわかれる。

・人望のある子供の家庭は、雰囲気が明るく、父の人柄が良い。折り目正しい躾、やっていいことといけないことのけじめがついている。親たちの会話の中に、他人の悪口が出てくることはまれで、他人の善意を信じ、それぞれの人の良い面を見ていこうとする気持ちが感じられる。

☆子供の能力を伸ばす親の言動について

*子供が何かをねだった時、『お父さんに聞いて、良いと言われたら買ってあげる』と少し日をおくと良い。子供の要求をはねつけるのは父の重要な役目である。

*子供の前で父親の批判、先生の批判をしてはいけない。

*約束や秘密(子供と親、子供同志)は小さいことでも必ず守る。(守らせる)

 (小さな約束でも守れたらほめてあげる)

*親しい人の葬式には子供も連れていく。(命の尊さを自然に感じる)

*人前で大きな声で子供を怒ってはいけない(自分がそうされた時の屈辱を考える)子供のプライドを壊してはいけない。プライドが傷つくと猛烈に反抗する。

*子供が失敗したとき、怒らずに励ますこと。失敗したときが飛躍するチャンス。

*親のヒステリーは百害あって一利なし。子供の思考力を奪い、情緒不安になる。

*夫婦円満な家庭は子供にとって最も良い環境である。

*母親の笑顔は子供が積極的になれる心の栄養である。

*試験の成績が悪かったからと言って怒ったり、ムッとしたりしてはいけない。『お母さんはもっと悪い点をとったことあるわよ、今度がんばろうね』と頭を撫でると、子供は安心してやる気を出してくる。

*兄弟げんかをしたとき、たまに弟の方を怒ってみると意外な効果がある。

(心にたまった兄の不満が解消する)

*怒るとき、『あなたはお姉ちゃん(お兄ちゃん)なのに!』と言う言葉は厳禁。好きで『お姉ちゃん』になったわけではない。我慢ばかりさせられているという被害意識を深めるだけ。なぐさめて共感を持つことが重要。

*父は母を押さえる力を持たなければいけない。

*母は子供の味方であり、何があっても最後までかばうことが重要。

★その一言が子供をダメにする。

*おまえはバカじゃないの!

*まだそんなこともできないの。

*おまえはブスだね。

*おまえはどうしてそうウソツキなの!

*あなたはいったい誰に似たの。

*よけいなことはしなくていいの!

*こんなバカ、見たことない。

*ほんとダメな子ね!

*じゃまよ!

*そんなのあたりまえでしょ!

*あなたはお兄ちゃんでしょう!

*おまえはママに似て鼻ペチャだな。

*うちの子は頭が悪くて…。

*バカなこと聞くんじゃないの!

*これはあなたには無理ね!

*今度やったらひどい目にあわせるからね。

*そんなこともわからないの!

*大人の話に口を出すんじゃないの!

 

☆柔軟な思考力(創造力)とIQ

*IQ…記憶する能力、計算力(正確さと早さ)、学習

*柔軟な思考力……環境への適応、まとめる能力、統率力、規則性を見出だす能力、一つの知識を他のものや状態と関連付けて理解する能力。

*IQを高めるための訓練…苦しさ、努力、根気…情緒不安、ストレス

*柔軟な思考力を高めるための訓練…遊び心と好奇心…情緒の安定、積極性を生む。

☆柔軟な思考力とlQは別のもの

*IQが高いからといって柔軟な思考力があるとはかぎりません。両者は別の能力です。IQが低くても柔軟な思考力が高ければ成績は良くなる。

*一般にIQが高く、柔軟な思考力があまり高くない生徒は、学業成績は良く、勉強もまじめで、教師のうけも良く、生徒も教師が何を要求しているかを敏感にとらえています。

そして、勉強とは、与えられた課題や目的とする試験で高得点をとることを目標としています。

*これに反して、IQはあまり高くないが柔軟な思考力の高い生徒は、好奇心が強く関心を示す領域が広い。成績にはむらがあり、勉強も点数の向上よりは自分の関心が主要な動機となっています。

☆柔軟な思考力はなぜ必要か

・自分が置かれた環境にスムーズに適応できる。

・困難にぶつかった時、それを乗り切る能力は、IQではなく、柔軟な思考力(創造力)である。

・柔軟な思考力が乏しい人は、ワンパターンの思考にしがみつきすぐに挫折し、なかなか立ち直れない。(ストレスがたまり、ノイローゼになりやすい)

・混沌とした中から、秩序を見出だす能力は、発明や発見につながる。

・たくさんの情報から、何が重要かを図式化し、頭の中を整理することができる。

・自分のおかれている環境の中で、自分が何をすべきかを考えることができる。

☆柔軟な思考力(創造性)のテストの例

・ボールペンを改良するとき、どんな点があるか。

・自動車が無くなったら世の中はどう変わるか。

・絵画や文章にタイトルをつける。

・古いタイヤの利用法を工夫せよ。

・ハイキングで食事を作るとき、マッチとライトを忘れたらどうするか。

・新しいスポーツまたはゲームを考案せよ。

☆美術による教育は『柔軟な思考力』の育成に最も適しています。

・絵の中では、どんな冒険も可能です。自分のパターンを打ち破り、新しいパターンを造り出すことが簡単に試みられます。(積極性を養います)

・絵の中では失敗が許されますので、子供達は試行錯誤を充分に行えます。

・一つだけの表現だけでなく、いろいろな表現方法があることを体で覚えていきます。こういう経験が、『困難にぶつかったとき、正面から攻めるだけでなく、横から、斜めから、そして一歩下がって客観的に見られる能力』につながっていきます。

・いつも見慣れた素材(物)や不要になったものを使って、おもちゃなどを作ることで、『意外な物が役に立つ』というイメージを植え付けます。これは、周囲に対処するときの武器になっていきます。

・作る喜び、完成する喜びを、美術が最も多く与えてくれます。(自信がつきます)

・美術は、子供の出したアイディアを最も大切にします。(それを具体化させるために、美術教師は必死になります。)

・絵画やデザインや工作などを通して、子供の中に埋もれている『遊び心、好奇心、未知への興味』を引き出します。

★子供は絵を描く中で『柔軟な思考力(創造力)』を身につけます。

★子供は絵を描く中で美を愛する豊かな心と質の高い美的センスを養います。

★子供は絵を描くことで、心の中のイライラを発散し情緒を安定させます

★子供は絵を描きながら集中力と根気を身につけます。『柔軟な思考力の育成』と『生涯続けられる贅沢な趣味』これが、芸術による教育の会の目的です。