研究ノート

芸術による教育の会研究部長:佐藤かよこ

芸術による教育の会副理事長:寺尾憲


性格はいかに作られるか

五つの節目

 性格とは何か。それは、性エネルギーが人生の節目、節目でどう満たされてきたかによって決定されるものであると言われています。問題児といわれている子供は、この節目の通過の仕方が不幸だったり、不完全だったりすることによって出来上がるのです。この大切な節目とは、・口唇期(口愛期)、・肛門期、・男根期(エディプスコンプレックス)、・潜在期、・性器期、の五つです。

 これは赤ちゃんがこの世に生を受けてから思春期に至までの道程です。ふだん何気なく過ごしていることが性格形成上どんな役割を果しているかについて、その一つ一つの節目について記してみたいと思います。

1、口唇期(口愛期)

 この時期は誕生から離乳までの時期で、授乳体験を通しての性格形成を指すものです。授乳は単に食欲を満たすだけのものではなく、乳(おっぱい)は赤ちゃんにとって人生最初の外界からの贈物であり、乳を拒否されることは愛情の拒否にもつながります。母の胸に抱かれて乳を飲むということは、母とのよき一体感と生の喜びを満喫することでもあるのです。幾ら泣いても授乳されないと、人生は、求めても応えてくれない無情なものと、否定的な態度を育成することになるか、あるいは、慢性の愛情飢餓状態に陥るといわれています。おっぱいを通して、母と子の信頼関係が作れるかどうかが、この節目のポイントです。

 乳は与えるべき時期には気前良く与え、離乳の時期になったら分離不安(母と子の)を感じさせないように徐々に離乳させていかなければいけないものなのです。

 この時期に問題を持つ人を口唇期性格といい、大人になって甘ったれであるとか酒のみであるとか言われます。また、極端な場合、赤ちゃんの要求がことごとく退けられ、母と子のコミニュケーションが閉ざされると、心を閉じた赤ちゃんが出来上がります。これは、母にとってまったく手が掛からない、都合の良い赤ちゃんとなります。これは『完壁な赤ちゃん』とか「サイレント・ベビー」などと呼ばれており、心に問題を持つと言われています。

2、肛門期

 離乳後から幼稚園入園までの時期を肛門期といいます。トイレ(排尿、排便)のしつけを通してセルフコントロールの訓練をする時期です。このしつけがあらゆるしつけの原点であり、欲求充足を延期する訓練です。(トイレに行くまで排尿、排便を我慢することです。) このしつけが厳しすぎると、他の面でも厳しすぎて、きちんとしなければ気が済まなく、四角四面で融通がきかない性格が出来上がると言われています。そしてこのように厳しすぎるトイレのしつけを受けた時、その反動としてケチな性格になりやすいと言われています。これを肛門期的性格と呼ばれています。

 トイレの中は母と子の秘密の場所であり、トイレの出来事は母と子だけの重要な秘密なのです。秘密を母が破っては絶対にいけません。母と子の信頼関係はここでつくられるのです。子供の排尿、排便の失敗を人前でなじったり怒ったりすることが続くと、子供は恥じを知らない性格となってしまいます。羞恥心は人間の大切な心です。恥知らずの人間は、この節目がうまく通過できなかったためと言われています。

3、男根期

 男根期とは、排泄のしつけのすんだ後の幼児期をいいます。男児はペニスを有することを誇り、女児はそれがないことに劣等感を持ち、それを持ちたいと思う時期です。

 よく幼稚園で、年少の女児が、男児とトイレで同じようにおしっこをして靴下やパンティをぬらしている光景を見かけます。これは女児のペニス羨望のあらわれの顕著な例です。ペニスは力の象徴であり、男の子が男らしさを、女の子は女らしさを身につける時期です。それぞれのからだの仕組みのちがい、それぞれの良さを自覚させて育てることが大切です。この時期はエディプスコンプレックスの時期とも呼ばれています。女の子は母を通して母を自らの中にとり入れて、やさしさや女らしさ身につけ、そして、父の愛を得ようとする時期です。男の子は、父とライバル関係になることで父と張り合い、母の愛を得ようとし、男らしさを学習する時期です。子供はそれぞれ異性の親の愛を得るために、男らしさ、女らしさを身につけていくのです。異性の親への憧憬により、同性の親のパーソナリティを摂取して成長する大切な時期です。

4、潜在期

 これは小学校に入って、社会のルール(禁止、命令、義務)の中での生活が始まることによって、本能的な欲求を抑制し、そしてそれを潜在化しなければいけない時期です。この時期に大切なことは社会のルールに従って抑圧した分を社会で容認される形で発散させることです。またこの時期は、エディプスコンプレックスの時期でもあるので、異性の親の愛情(優しさ、スキンシップ)が何より大切なことは言うまでもありません。そして父親の権威、力、威嚇が特に男の子にとって必要です。父の強さが示されないと、男の子は、強くたくましい男になれないのです。さらに、母の子供への干渉過多は子供をダメにしてしまうことは周智のとうりです。

5、性器期

 性的感情が出てくる時期で、そのことに不安や罪悪感を持つことなく、異性との好ましい感情交流を持てることが必要です。これは、口唇期、肛門期、男根期、潜在期、のそれぞれの節目を無事通過してこそ理想的な形で到達できるもので、パーソナリティ形成上、未解決な問題を持ち越さないことが大切です。新聞の社会面をにぎわす少年の犯罪、幼女の誘拐殺人-性的犯罪、などを犯す子供達、少年達は、ある日突然出来上がった子供ではないことを理解してください。