研究ノート

芸術による教育の会研究部長:佐藤かよこ

芸術による教育の会副理事長:寺尾憲

性格はいかに作られるか

長女の扱い方

 今回は弟妹のいる長女(第一子)の扱い方について述べます。
 長女は両親にとって初めての子供であり、手探りの状態で育てられます。そして、たいていは過保護、干渉過多、口やかましさ、の中で育っていくのです。このことについては、長男も同様です。
 しかし、実は、ここには決定的な相違があります。それは、母親が女であるということです。すなわち、長男と母親は異性であるため長男は母親が唯一の愛の対象となる(エディプス・コンプレックス)。そのために、母親のきぴしさや口やかましさがすべて長男の心に入り込み、長男はそれを心の奥底に閉込めようとします。その結果、長男は母親の前では良い子となりピーターパン(自立できない永遠の少年)への道を歩き始めることになるのです(次号で詳しく述べる)。長女の場合は母親と同性の関係になります。したがって母親のきびしさと口やかましさも、長女の反発心(同性のため)のために、長男のように重傷にはならないのが普通です。第一子は女が良い(一姫二太郎)と昔から言われる理由がここにあります。
 長女の下に弟妹ができた時、長女は突然お姉ちゃんにさせられ、母の暖かい乳房とひざから放り出され、そこを赤ちゃんが占領します。この時の長女のさびしさと疎外感は長男の場合と同様に大変なものです。こんなにつらい思いをしているのに多くの母親は.『あなたはお姉ちゃんでしょ、良い子にしなさい、うるさくしないの!』と口やかましく怒ってしまいます。長女は、なりたくてお姉ちゃんになったわけでは決してありません。『弟や妹など、どこかへあげてしまえばいい、死んじゃえばいいのに!・・‥・・。』と無意識に思っているのです。長女はさびしさと不満を心の奥にしまい、口やかましい母のこごとを受止めます。長女は一生懸命に良い子になり、我慢に我慢を重ねて生きていくのです。

*長女がこのような環境の下で育った場合、次の様な性格が作られます。がんばりやのしっかりもののお姉ちゃん、頭はいいが融通がきかない女の子、頑固で言い出したらきかない、母親と対等にけんかする。やわらかさ(柔軟性)が足りない、用心深く失敗を恐れる。といった性格が作られるのです。これは、世界中の第一子の長女に共通した性格なのです。

=長女を扱うポイント=
★長女にプライドをもたせる。
 長女は偉いもの、すばらしいものという自覚を持たせることが重要です。お姉ちゃんでよかったという状況が作れれば成功です。『あなたはお姉ちゃんで身体が大きいのだから特別にあげるわね。あなたが我慢しているのをお母さんはちゃんとわかっているのよ、えらかったわね。あなたがいてくれるおかげでお母さん助かっているのよ、ありがとう。』という母の言葉が何よりも必要なのです。 『お柿ちゃんなのに、お柿ちゃんのくせに』などという言葉は厳禁です。

★父親が長女の恋人になる。
 父親にあまえ、父親にやさしいことばをかけてもらい、父親に充分に抱いてもらう。このことが長女の中に女らしい軟らかさとやさしさを育てます。長女は父の愛を通して、愛される喜びと愛されるためのテクニックを身に付けていくのです。
★父親に充分に愛された女の子は頭にのって、怖いもの知らずとなり、手がつけられなくなる。
 父親は女の子にやさしくするのが原則ですが、我が強すぎる時や出過ぎた時は次のような言葉で対処すると良い。『そんな子は嫌いだよ。そんな子はパパの子じゃない。そんなことする子はちっとも可愛くない。そんな子はパパは嫌いだよ。』というように、良い悪いの判断よりも長女の情緒にうったえたはうが効果があるのです。これは、最愛の父に嫌われたら大変だ、という女の子の本能にうったえるものであり、女の子を押さえる切り札です。

★長女が失敗をした時、怒るよりもなぐさめる方が先。
 子供がころんだり、失敗したりした時、母親の第一声は『大丈夫だった、痛かったでしょう、かわいそうに』と優しくなぐさめてほしいものです。 『ダメじゃないの。ボヤボヤしてるから。何やっているの』などという言葉を先に言ってしまう母親は失格です。子供は失敗を恐れ、用心深くなり消極的になってしまいます。

★母親は長女を小じゅうとめ(夫の姉妹)とおもって対処すると良い。
 母親は長女がいうことをきかない時、頭ごなしに怒って、いうことをきかせるというケースが多く見られます。これでは長女は意地になって反発し、お互いにエスカレートして収拾がつかなくなります。これは母親が自分の子供だから押えられるという誤った考えに基づくものですが、このやり方では解決しません。長女は増々強情になり手がつけられなくなります。これは母と長女が同性であるために起こることであり、父との間ではありえないことです。重要なことは、長女を自分の所有物とは考えず、一人前の女として対等につきあうことです。つまり、小じゅうとめに接するように、長女の気持ちを考えて対処した方がはるかにうまくいきます。母と長女(娘)は永遠のライバルなのです。

★母親のセンスの良さが長女を女らしくする。
 母親の言葉づかい、服のセンス、人との接し方、女としての心づかい、やわらかさ、やさしさ等は長女にとって重要な教科書となります。なりふり構わずという母親は娘の心に非難と反発を生じさせます。

★母親は長女を相談相手にすると良い。
 母親が着て行く洋服を選ぶ時、父親の服等を選ぶ時、弟や妹の物を選ぶ時、家具や小物を選ぶ時、夕飯のおかずを考える時など、長女を相談相手にしてほしいものです。そして可能な限り長女の意見を取入れ、長女のセンスの良さをほめてあげる。これがポイントです。

★長女の育てかたを失敗すると、弟や妹が被害を受ける。
 長女が、我慢に我慢を重ね、良い子にしているにもかかわらず、親のなぐさめややさしさが得られなかった場合、長女はそのはけ口に弟や妹をいじめます。これは単なる姉弟喧嘩というのとは異なり、長女のいじめは陰湿となり、特に親の見ていないところでは知能の限りをつくして弟や妹をいじめます。そうすると、特に弟は、いじけてしまい、情緒不安定になりやすいのです。弟や妹を良くするためにも、まず、長女を愛情で満たしてしまうことが肝腎です。

★第一子(長男・長女)は生れた時は一人っ子です。
 両親の愛情を独占し、その事が当たり前のこととして成長していきます。ところが、弟や妹が生まれたとたんに、長男(または長女)は母の暖かい胸や腕や足から放り出され、その上、優しい言葉もかけてもらえなくなります。自分が独占していた母は弟(妹)に独占され、自分は嫉妬と怒りとさびしさで気が狂わんばかりになります。100あったものがゼロになってしまうのです。この天と地ほど違うギャップに長男や長女は苦しむのです。『いい子にすればお母さんがかわいがってくれる』と、けなげにがまんし続けるのです。