見本を描いたら、子どもたちに軽く超えられた話

お正月明けての初めてのレッスンで、幼児さんたちと「墨絵」をしました。

正直に言うと、

幼児 × 墨汁 は、なかなかのドキドキ案件です。

お借りしているお部屋だし、

「もし墨が飛んだらどうしよう…」

「床に落ちたら…」

そんな大人の心配が、頭の中をぐるぐる。

いつもより少し背筋を伸ばして、

教室全体もちょっと緊張した空気。

「新年、初めてのお絵描きだね」

「描き初めだね」

「何を描こうかな…」

新年明けましておめでとうございます。

そうだ、富士山を描こう!

……と、ここでやってしまいました。

子どもたちに向けて、

インパクトのある見本を、しっかり描いて見せてしまったのです。

描きながら、心の中で

「しまった…」

「みんな、ちゃんとお約束守って描いてくれるかな…」

「もしかして、自由な気持ちを狭めちゃったかも…」

案の定、

ほとんどの子が富士山を描き始めました。

うわー……

これじゃあ、見本に倣って書く、

お習字みたいじゃないか…

おおお…

むむむう……

ところが。

よく見ると、

同じ富士山が一枚もない。

線の勢いも、形も、余白も、

ちゃんと一人ひとり違う。

個性や工夫が、ちゃんと生きている。

その時です。

「……えっ?」

富士山のてっぺんに、

黒い丸が、どーん。

「◯◯ちゃん、この富士山にくっついてる黒い丸はなあに?」

「いんせきだよ!」

「えっ!?

「隕石がぶつかったの? 富士山に??」

さらに、よく見ると・・。

(……えええ??富士山の“両目”に、たっぷりと水滴が乗っている……)

「◯◯ちゃん、この富士山のおめ目の上が水たまりになっているけど……

もしかして、泣いてるの?」

「そうだよ!いんせきがぶつかって、いたいって、ないてるの」

……感動。

富士山に隕石。

しかも、墨で涙を表現するのではなく・・

筆洗バケツの水を画用紙に垂らして「泣いている富士山」を表現するなんて・・。

こんな発想、

大人には、まず出てきません。

「見本を描いてしまった」

「自由を奪ったかもしれない」

そう思っていたのは、

完全に大人側の思い込みでした。

子どもたちは、

ちゃんと見本を“超えて”きます。

借りものの形を、

自分の世界に引きずり込んで、

まったく別の物語にしてしまう。

だから、やっぱり思うのです。

アートの時間は、

「上手に描く」ための時間じゃない。

世界を、自分の見方で描き直す時間なんだな、と。

今日も、

子どもたちに、一本、

きれいに裏切られました。

ありがたい裏切りです。




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PROFILE

屋嘉部 正人(わかめ先生)
屋嘉部 正人(わかめ先生)芸術による教育の会GM
沖縄生まれの大阪育ちの千葉県野田市在住
多摩美術大学絵画学科油画専攻卒業
多摩大学大学院 経営情報学研究科修士
芸術による教育の会 取締役GM

大学四年生から芸術による教育の会で美術教室教師としてアルバイトを始め、大学卒業とともに同会に入社。

美術家として個展やグループ展など多数発表を続け、新制作協会に所属。

50歳を機に人生をリセット
・右利きを辞めて左利きとして生まれ変わる
・やりたくてやらなかったことを全てやる
52歳で新制作協会会員を退会

・芸術による教育を全国に広める伝道師として芸術による教育の会GMとなる
・「紙コップのインスタレーション」を各地で実施。