なぜ、十年在籍後は授業料が無料?

芸術による教育の会では、毎年「明日への手美術展」会期中にて、本会の美術教室に五年間または十年間通っている生徒の皆さまへ感謝の気持ちと奨励の心を込めて表彰式があります。

五年在籍表彰者へは表彰状と純銅のメダルと記念品が、十年在籍者へは表彰状と純銀のメダルと記念品が贈られます。

純銅と純銀のメダルで驚かれる方もたくさんいらっしゃいますが・・


なんと、芸術による教育の会の生徒は十年在籍後は授業料が無料となります。


とアナウンスすると皆さん「ええ!!タダですかあ??!!」と必ず目を丸くして驚きになります。

30年前に私が本会で教師を始めた時にも五年・十年在籍者への表彰式とメダル授与はありましたが、十年後の月謝無料という制度はありませんでした。

教師になって初めて表彰式に参加した私は、十年の表彰を機に退会する生徒さんが多いことを知りました。

もちろん、十年後も通い続けてくださる生徒さんもおりましたが、十五年以上続ける方はほとんどおりませんでした。

十年以上在籍した生徒さんは、高校受験を迎えた中学三年生や勉学に忙しい高校生がほとんどです。

なかなか、毎週一回定期的に美術教室に通うのが難しくなる時期でもあります。

毎週通えないのに授業料を支払い続けるのはとてももったいないことです。

そのような理由で十年を機に退会する方がとても多く、残念なことにその後のおつきあいがなくなってしまうことがほとんどでした。

私が何より残念に思ったのは、十年続けて来た生徒のみなさまが本会を退会した後にほとんど絵を描いていないと知った時でした。

十年も美術を愛して来たのに、美術教室に通うという習慣が途絶えると自宅では絵を描かない??!!

それはとても勿体無いことだと思いました。

そして、私は本会の寺尾社長に提案したのです。
(※「おねだり上手はプレゼン上手」の記事はこちら)

「十年在籍後は授業料を無料にしませんか?」

「これまでの生徒さん達は十年在籍の表彰後はほとんどの方が退会しています。退会したら授業料としての収入はゼロです。どうせ収入がゼロなんだったら、授業料を無料にしても同じです。生徒との縁が続くことの方が大切だと思います。【芸術による生涯教育】という本会の理念にも即しています。」

寺尾社長は、即決で承認しました。

十年後は授業料無料の制度が決まった後に入社して来た教師の中では、「どうしてタダで教えなきゃいけないんですか!」という人たちもいますが、その経緯を丁寧に説明するとみんなよく理解し納得してくれました。

美術教室運営というのは教育でありビジネスです。

私たちは、美術を通した教育で子ども達の健やかな成長を育んでいます。その仕事の報酬として保護者様より授業料をいただいております。

無料で指導しては教師は生活していけません。

しかし、芸術による教育の会はお金を稼ぐことを目的として設立したのではありません。

「芸術による教育」を行い、美術を通して人を幸せにすることが目的です。授業料は目的を果たしてこそいただけるものです。

私たち教師は、十年在籍の生徒の授業料を無料にすることで生活できなくなるわけではありません。


生徒達とこれからもつながり続けることこそ価値があり幸せです。


現在、200人以上の生徒様が十年以上在籍され、永久会員として本会でつながり続けています。

この200人の生徒様が美術教室に楽しく通ってくれていることが、後輩の生徒達の励みになっております。

今年度、五年間・十年間在籍を迎える生徒の皆様、おめでとうございます。

そして、ありがとうございます。

生徒の皆様とそれを応援し支えてくださった保護者の皆様へ教師一同心より感謝申し上げます。

芸術による教育の輪がますます広がっていきますよう、これからもご理解とご協力をよろしくお願い申し上げます。

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PROFILE

屋嘉部 正人
屋嘉部 正人芸術による教育の会GM
沖縄生まれの大阪育ちの千葉県野田市在住
多摩美術大学絵画学科油画専攻卒業
横浜美術大学絵画コース非常勤講師

大学四年生から芸術による教育の会で美術教室教師としてアルバイトを始め、大学卒業とともに同会に入社。

美術家として個展やグループ展など多数発表を続け、新制作協会に所属。

50歳を機に人生をリセット
・右利きを辞めて左利きとして生まれ変わる
・やりたくてやらなかったことを全てやる
52歳で新制作協会会員を退会
53歳でこれだけはやめられない一番好きなお酒をやめる
・芸術による教育を全国に広める伝道師として芸術による教育の会GMとなる
・「紙コップのインスタレーション」を各地で実施。