節分の話:第3弾ー「福は内!鬼も内!」

「鬼は外!」と移民の人たちに豆をまくトランプ氏は善人ですか?悪人ですか?

2回に分けて取り上げました節分の話について、たくさんご意見をいただきました。

(第1弾:節分「鬼は外!福は内!」幼児が描く鬼の世界)

(第2弾:幼児に話すちょっと怖い節分の話)

「昔々、2月3日の節分の頃は病気をこじらせて死んでしまう人や火事や災いが起こることが多かったんだ。」と書きました。
春夏秋冬それぞれ立春・立夏・立秋・立冬の前日を節分と言いますが、江戸時代以降は年の初めである節分に一年の厄を祓う意味で主に立春の前日を節分と呼び、豆まきを行うようになったそうです。
勉強になりました。

「屋嘉部先生、子どもを怖がらせすぎ!」とか「鬼のせいにして怖がらせることで子どもの行動を抑制したり、良い習慣を身につけると言うのはどうかと思う」などのご意見もいただきました。ご意見ありがとうございます。

私は最近、「良い行いと悪い行いについて」または「正義と悪について」など、人としてのあり方や道徳について考えることが多くなりました。

昨年フィリピンの大統領になったドゥテルテ大統領は、非合法に麻薬犯罪者を殺害していると諸外国から非難を浴びています。

私は一昨年にフィリピンのダバオ市に英語短期留学をしました。
その時、ダバオ市はドゥテルテ氏が市長になってから治安が良くなり、安心して平和に暮らせるようになったと多くの人から聞きました。

ダバオ滞在中に私は一度も危険な目にあうことはなかったばかりか、まるで日本にいるかのように、見知らぬ人から「お金落としましたよ」と親切に声をかけられました。
ダバオ市はドゥテルテ市長の剛腕な政治で安全な都市に生まれ変わったのです。
その剛腕ぶりと実行力が期待され、圧倒的支持を受けて昨年フィリピンの大統領になりました。
だから、ダバオ市民にとってはもちろんのこと、多くのフィリピン国民にとってもドゥテルテ大統領は英雄であり正義の人として愛されています。

アメリカのトランプ大統領についてはどうでしょう?
彼は悪人なんでしょうか?善人なんでしょうか?
私には、トランプ大統領が悪人かどうかはわかりませんが善人だとは思えません。
善人ではないからといって、トランプ大統領が英雄なのか正義の人になるかについてもわかりません。

トランプ大統領は、ある人たちにとっては正義の人なわけです。
「鬼は外!」とアメリカの国益を脅かす者たちを鬼退治をするかのように追放する。

歴史を振り返ると、勝者が正義として扱われてきました。「過去の事実は変えられない」と言いますが、過去の事実は勝者によって書き換えられてきました。
記憶も記録も伝言ゲームのように勝者に都合よく書き換えられてきました。

今も日本と中国、日本と韓国の間で、歴史の書き換えゲームが行われています。

正義ってなんですかねえ。

歴史とともに法律さえも書き換えられてきたわけですから、過去の正義が今では通用しないように、今の正義も近い将来通用しなくなるかもしれません。

教育の場においても、その時代において都合よく子供達に正義を刷り込んできました。

「時代」や「環境」が変われば、そこにふさわしいルールが変わるのはわかるのですが、
人としての「あり方」や善悪の価値観まで変わるというのは受け入れがたいものです。
とはいえ、人を大勢殺して領土を奪ったリーダーを英雄として歴史に刻んできた事実をどう受け入れればいいのでしょう。
勝者にとっては「私は万民のために鬼を退治した」という正義を歴史に刻んだわけです。

私たち日本人が行う節分の儀式として「鬼は外!」と鬼を悪者にして追い払うのも、人間側から見た偏った正義なのかもしれませんね。

まさに、鬼の立場に立つと人間の方が悪いということになるでしょうか。

ある保護者さまから素敵な話を聞きました。

節分の時に昔ながらの鬼退治の話ではなく、鬼にもかわいい鬼や良い鬼がいるという話を子どもたちに読み聞かせをするようにしているとのことです。
だから「鬼は内!って言ってみる?」と子どもたちに提案して見たそうです。

なんて素敵な話でしょう!私は素直に感動しました。

いろいろな視点に立ち、物事の本質を考える

まさに美術的な視点です。

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これは、ゲシュタルト心理学に使われる「妻と義母 (つまとぎぼ, My Wife and My Mother-In-Law)」の図です。

若い女性に見える人と老婆に見える人がそれぞれ、「私の方こそ正しい!あなたは間違えている!」と主張します。どちらのサイドにフォーカスするかで、見えている世界や感じ方、受け取り方が全く違うわけですから、双方の主張が異なって当然です。

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若い女性を「図」として認識した場合

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老婆を「図」として認識した場合

相手には相手の言い分があり、立場がある。鬼にも鬼の言い分や立場がある。
人は、自分の方こそが正義だと思うから他方を非難し受け入れられないわけです。

相手の視点に立って物事を捉えるためには、意固地になった自らの考えを疑ってかかる必要があります。

「自分の考えが間違えているのかなあ?」

「もし自分が相手の立場だったら、この世界はどのように見えるのだろう?」

「若い女性にも見えるけど、老婆にも見えるね」と受け入れられる広い心を持ちたいものです。

日本人は自己主張がないからダメだと言われますが、本当にそうでしょうか?

自己主張の強いもの同士が押し合うから引くに引けなくなりエスカレートする。

自分の主張を少し引いてみる。

日本人は相手の主張を自分の主張で跳ね返すのではなく、むしろ迎え入れる心を持っていると思います。

清濁併せ呑む日本人だからこそできる心の在り方だと思います。

政治の世界はそう簡単ではないのでしょうが・・

人と人とのお付き合いにおいては、相手の立場や様々な視点に立って美術的思考でお付き合いしたいものです。

「福は内!鬼も内!」

今年の節分はこれでいきましょう!


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PROFILE

屋嘉部 正人
屋嘉部 正人芸術による教育の会GM
沖縄生まれの大阪育ちの千葉県野田市在住
多摩美術大学絵画学科油画専攻卒業
横浜美術大学絵画コース非常勤講師

大学四年生から芸術による教育の会で美術教室教師としてアルバイトを始め、大学卒業とともに同会に入社。

美術家として個展やグループ展など多数発表を続け、新制作協会に所属。

50歳を機に人生をリセット
・右利きを辞めて左利きとして生まれ変わる
・やりたくてやらなかったことを全てやる
52歳で新制作協会会員を退会
53歳でこれだけはやめられない一番好きなお酒をやめる
・芸術による教育を全国に広める伝道師として芸術による教育の会GMとなる
・「紙コップのインスタレーション」を各地で実施。